ストーカー規制法の罰則【逮捕後の流れと手続き、示談などについて】

ストーカー行為は立派な犯罪であり、むろん許されるようなことではありません。

しかし、相手に対しての好意が高まりすぎてしまい、自分でも気が付かない内にストーカー行為に手を染めていたということもあるかもしれません。

この記事を読んでいる人の中にも、逮捕されたことはないけれど、ストーカー行為をした経験があったり、警察から問い合わせや警告の電話があったり、ストーカー行為をした対象者から慰謝料を求められたりした人もいるかもしれません。

いくら好意を抱いているとはいえ、一線を越えて犯罪を犯す気はなくても、逮捕されて実刑が下されては重大な社会的なペナルティーを受けることになります。

もし逮捕された場合、どういった法律で処罰されるのか? 懲役は何年なのか? 執行猶予はつくのか? 罰金を払うとしたらいくらなのか? 示談はできるのか?このようなことが気になっている人もいるかもしれません。

この記事ではあなたや親しい人たちが、ストーカー行為にて逮捕された場合にどう対処すればいいのかを説明していきます。

ストーカー行為で処罰される場合の法律

ストーカー行為を行った場合、犯罪性があると判断された場合はストーカー規制法により処罰の対象になります。

どのような内容なのか、ここで把握しておきましょう。

ストーカー規制法とは?

正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」と言います。

この法律は具体的にどういった行為がストーカーとストーカー行為に当たるのかを定義し、それを行う人に対して警告をしたり警告をしても行為を止めなかったり、その行為が悪質な場合には、行為者に刑罰を科して被害者を守ることを目的とした法律です。

世間一般のイメージでは、男性が加害者で女性が被害者という構図ですが、ストーカー規制法では性別の区別はなく、ストーカー行為をすれば逮捕される可能性があります。

ストーカー規制法に違反する行為には、大きく分けて2つに分けることができます。
「つきまとい等」と「ストーカー行為」です。

つきまとい等

相手に対しての執拗なつきまとい、道端で待ち伏せる、相手の自宅に押し掛ける、自宅の周囲をうろつく等

好意を持った相手に対して外出時に尾行する、特定の場所で待ち伏せをする、相手の進路に立ちふさがる、家や職場や学校に押し掛けてきたり、自宅や職場を見張ったり相手の周囲をうろつくこと。

監視していると告げる行為

相手の服装やその日一日の行動内容を、電話やメールなどで伝えて、相手を常に監視下に置いていることにに気付かせること。

面会、交際の要求

相手に面会を要求したり、自分と交際をするように要求したり、過去に交際していた経緯があれば復縁を迫ったり、相手がいらないと断っても贈り物を受け取るように強要すること。

乱暴な言動

相手の自宅の前にて大声を出して罵ったり、自動車のクラクションを鳴らしたり、「〇ね」「〇すぞ」と発言するなど、乱暴な言動をすること。

無言電話や連続電話、メール、ファックスを送り付ける、SNSの書き込み

相手に対して何度も繰り返し連続で電話をしたり、大量のメールやファックスの送信をしたり、相手のSNSへ執拗なコメントの書き込みを繰り返すこと。

汚物や危険物の送付

素手で触ると怪我をするような危険な細工をした物体や、排泄物や汚物や動物の死骸などを家や職場に送る行為。

名誉を傷つける行為

相手の社会的な名誉を傷つけることを目的とした電話やメールを送り付けたり、誹謗中傷を目的としたビラや怪文書を自宅や職場の周囲に貼り付けたりばら撒く行為。

性的羞恥心の侵害

卑猥な内容の電話やメールを送る。わいせつな写真を家や職場に送り付けること。

ストーカー行為

ストーカー規制法では、特定の人に対して上記の「つきまとい等」の行為を繰り返し行うことを、「ストーカー行為」と定めています。

ここで重視されている点ですが、「ストーカー行為」と定められるには「つきまとい等」の行為が一回だけでなく、日常的に何度も繰り返し行われていることが重要です。

単発的な嫌がらせ行為では「ストーカー行為」には当たりません。

他にも身体や生命の危機に晒されていることや、生活している住居に侵入されそうなことなど「ストーカー行為」と認定されるには一定の条件があります。

罰則について

  • ストーカー行為をしたものは、1年以下の懲役又は100万以下の罰金
  • 禁止命令等に違反してストーカー行為をしたものは、2年以下の懲役又は200万以下の罰金
  • 禁止命令に違反した者は、6カ月以下の懲役又は50万以下の罰金

逮捕された後の流れや手続きについて

逮捕されると48時間警察から取り調べを受けます。

この間は親族であっても接見することはできず、弁護士以外は外部の人間と接することができない状況に置かれます。

その次に送検といって、警察から検察へと身柄が引き渡されます。

原則として検察の捜査は24時間以内とされていますが、被疑者が罪を認めなかったり、事件性が複雑な場合には長引くこともあります。

特にストーカ-犯罪の場合は、被害者に対する報復行為や自らの行った行為の証拠隠滅を図る可能性が高いと見られており、
逮捕後は拘留期限が延長されることが多いようです。

この拘留請求ですが、裁判所が認めると原則としては10日間与えられ、捜査の進展がない場合はさらに10日間の拘留延長が認められるようになっています。

この間に検察は起訴するか否かを決めます。起訴すると決めた場合は刑事裁判が始まり、有罪か無罪かを判断します。

無罪になればそれに越したことはないのですが、日本の刑事司法では起訴されると99.9%が有罪となりますので、有罪になるかどうかは起訴されるか不起訴で済むかが大きな分かれ目になっています。

逮捕された場合の対応と前科を付けないようにするためには

有罪となって前科を付けないようにするためにも、ストーカーとして逮捕されてしまった場合は、一刻も早く被害者と示談をすることが重要です。

必ず弁護士に相談する

ストーカー行為は相手への好意が高まりすぎて、自分でも気が付かないまま一線を越えてしまっていることが多い行為です。

自分では問題ないと信じているため、逮捕されたときは冷静な判断と対応がとりずらいので、必ず弁護士に相談しましょう。

弁護士なら法的な観点から、あなたがとった行動が違法性があるかどうかを判断することができます。

仮に自分のやってしまった行為が違法性があるのならば、素直に自分の犯した罪を認めて改善策をとらなくてはいけませんし、前科を付けないようにするためにも被害者との示談交渉を進めなくてはいけません。

そのためにも信頼できる弁護士にアドバイスをもらいながら、対応していくのが一番です。

被害者と示談する

何とかして処分を軽いものにするためには、被害者と示談しなければなりません。

被害者との示談に持ち込むことが出来れば、不起訴の可能性は大きくなります。

そのためにも弁護士を付けて交渉を進めていくのは必須と言えます。

何故なら被疑者が被害者と直接謝罪や示談交渉等をするのは極めて難しいからです。

被害者は被疑者の取ったストーカー行為によって、精神的なショックを受けていることがほとんどです。

そのため、被疑者からの連絡や接触に対して強い拒絶を示します。下手に示談のための連絡を取るだけで「ストーカー行為」と見なされて被害感情が増大するだけですので、示談には必ず弁護士を通して行うことにしましょう。

示談金の相場は?

相場は一般的には50万から150万程度と言われています。

基本的にはこの場合の示談金は慰謝料ですので、被害者が受けた行為とその苦痛の度合いによって額は大きくなります。

当然、行為が悪質で執拗なものであった場合は高額なものとなります。

また、高額で一括で払うことができない場合は、減額や分割の支払いの交渉をする必要もあります。

こうした交渉は専門家でなければ困難なので、ストーカー行為によって逮捕された際は一刻も早く弁護士に相談しましょう。

実際に冤罪で逮捕されそうになった体験談

本来ストーカー規制法は迷惑行為・犯罪行為から個人を守るための物ですが、中にはそれによって冤罪となるようなケースもあります。実際に遭ったケースを紹介します。

交際していた女性からストーカー規制法違反で訴えられる

同じ会社で交際していた女性から訴えられたケースを取り上げたいと思います。

会社員の佐藤さん(仮)は同じ職場の女性山田さん(仮)と交際していました。関係は良好で将来結婚も視野に入れた話も出ていました。そんな中で佐藤さんは仕事の都合でお客さんの所に出向する形で、今までいる職場から離れることになりました。

山田さんとはコミュニケーションを密にしているつもりでしたが、ある日突然別れを切り出されたそうです。
佐藤さんにとっては何もかもいきなりで、彼女を失いたくないので引き留めにかかったのですが、別れたいの一択でした。

待ち伏せして復縁を迫ったのですが、ひたすら拒否されることの繰り返しだったそうです。

どうしてこうなってしまったのか、どうすればいいのかわからないまま悶々として日々を送っていたそうなのですが、ある日突然警察から電話がかかってきて、山田さんがストーカー行為で困っていて警告するために電話をしたと言われたそうです。

佐藤さんはショックを受けたそうですが、そこまで彼女が嫌がっているのならばと身を引いて迷惑をかけないことを決めました。

それからしばらくして山田さんが、佐藤さんの隣のデスクで仕事をしていた男と交際していることを同僚を通じて知り、その男がストーカー行為で警察に相談することを彼女に入れ知恵をしたことを知りました。

佐藤さんはもう抗議する気も失せて、彼女との関係を完全に終わらせることに決めたそうです。

あくまでもストーカー規制法は被害者を守るためにあるもので、悪用されるようなものではないのですがこのようなケースもあるようです。

以上、ストーカーとして逮捕された際の罰則についてでした。